Q&Aよくある質問

ケアラー向けQ&A

 ケアラーは、心身の慢性的な疲れやストレス、孤立感、将来の見通しが立たないことなどの課題を抱えることがあります。ケアのために自分自身の生活やキャリアを犠牲にすることが多く、精神的・身体的な負担が大きいです。また、ケアラーの状況は、ケアの対象となる人の年齢や特性に加え、自身のライフステージや特性(病気や障害、不調の有無 等)、家庭や会社、地域社会等で担っている役割等によって異なります。ケアの内容や時間、ケアラーとしての自覚の有無、必要な支援もそれぞれ異なります。
 ケアラーが孤立しないためには、地域の支援団体・住民(こども食堂、居場所支援、学習支援、民生委員・児童委員など)やケアラー同士の交流の場(ケアラーの息抜きのためのカフェ、サロン等のピアサポートなど)に参加することも有効です。また、家族や友人、支援者と定期的にコミュニケーションを取ることも重要です。孤立感を感じたら、すぐに相談できる相手を見つけておくと良いでしょう。
 仕事や学業との両立が難しい場合、以下のような支援を活用できます。
•介護休業・介護休暇(仕事と介護の両立支援)
•学習支援制度(ヤングケアラー向け)
•ヘルパーや通訳の派遣サービス(自治体による支援)
•ピアサポートグループへの参加(同じ立場の人との交流)
 その友人の気持ちを想像しながら、以下のようなできることをやってみましょう。いつも通りに友達として接することが大切です。
• 寄り添って話を聞いてみる:無理に悩みを聞き出そうとしなくても、「大丈夫?」の一言だけで、きっと心は軽くなります。
• 信頼できる大人に一緒に相談にいく:勇気を出して、大人に頼ってみてください。力になってくれる大人は身の回りに必ずいます。
• 相談窓口を一緒に探してみる:頼り先として「相談窓口」という選択肢もあります。状況にあった適切な相談先があります。
 ケアが終わった後も、精神的な負担や喪失感を抱えることがあります。そのため、自治体や支援団体では、以下のような支援を行っています。介護などを終えた「元ケアラー」や進学や結婚等により一旦ケアから離れたケアラーは、罪悪感を持ったり、ケアが終わっても精神的な辛さを感じていたりすることがあります。ケアラーが安心できる場で自分の気持ちを語ることで、自身の人生を前向きに考えることにつながります。

• ピアサポート活動への参加(現役のケアラーや元ケアラーとの交流)
• カウンセリングの提供

関係機関向けQ&A

継続的に見守ることが大切です。
 現状困りごとがないのであれば、特別な支援(介入)は不要となりますが、将来的に、ケアラーやケアを受ける方の状況の変化がある可能性があります。そのため、継続的な見守り体制を整える必要があります。
 また、ケアラー支援は、本人の意思を尊重して支援を進めることを基本としているので、ケアラー本人に支援を望まないとの意思を明確に示した場合は、本人が支援を求めたり、困りごととして捉えたりするまで、つながり続ける(待つ)必要があります。
 支援者が持つ「家族(親、こども、きょうだい)ならば○○すべき」という規範意識から、早急に支援を進めようとすると、むしろ信頼関係の構築が難しくなる場合があります。支援者はケアラーや家族に対して、規範意識に基づいた評価(ジャッジ)をできるだけ排除して接することが重要です。
 ケアラーに公的なサービスや制度の情報を伝えつつ、「あなた自身のことを気にかけています」というメッセージを発するようにしましょう。ケアラーが困った時に相談できる、頼りたいと思ってもらえる関係を築くことが大切です。
 ただし、ケアラーへの虐待(児童虐待等)や、ケアラーからケアを受ける方への虐待(高齢者虐待、障害者虐待等)の状況が確認された場合は、ケアラーの意思によらず、家庭に介入します。
子どもの負担感があるか、時間の制約があって学業・課外活動・進路に支障が出る状況か、ケア(お手伝い)の範囲や期限が決まっているかが、お手伝いとケアの分かれ目となります。
 児童虐待やいじめと異なり、ケアは社会にとって必要なものです。また、子どもの負担にならない程度の家事や家族の世話などを若い頃に担うことは、その後の人生に生かせる経験につながることも事実です。そのため、ヤングケアラーかどうか判断するのは難しい面があります。
 お手伝いは「子どもが子どもとしての生活ができる範囲内で行うこと」です。自分の年齢に合う作業や、年齢よりも少し上の作業をすることで、子どもは褒められ、達成感を味わえます。
 一方で、お手伝いの範囲や期限が決まっていない場合、具体的には、ヤングケアラーがケアを「しない」という選択ができない状況が続いている場合は、ヤングケアラーと言えます。
 また、ヤングケアラー本人の睡眠時間が確保できていない、心身の不調がある(頭痛、不登校、抑うつ状態)、学業・課外活動・進路等に支障が出ている(出る可能性がある)場合も、ヤングケアラーと言えます。
 最終的に支援対象であるかの判断を行うに当たっては、一人一人の子どもの客観的な状況と主観的な受け止め等を踏まえ、本人の最善の利益の観点から、個別に判断することが重要です。
ケアラーの意思を最大限尊重し、サポートすることが重要です。
 別居している親族が「家族を大切にしたい」という思いを持っているものの、なかなか様子を見に行けない場合は、ケアラーにケア役割を担ってもらうことで罪悪感をカバーしようとする傾向があります。支援者はそれぞれの思いを理解する必要があります。
 支援者側もケアラーに「家族で面倒をみるのは当たり前」という思いで接するのではなく、ケアラー自身の人生を大切にする必要があるという視点を持つことが重要です。
 ケアラーが親族の圧力により離職を迫られるケースで、ケアラーに仕事を継続したい意思がある場合は、支援者は就労継続支援のための勤務先の制度例(介護休業、介護休暇、時短勤務等)の情報を提示できるとよいでしょう。
ケアラーと信頼関係を築き、「受援力」を高められるような関わりを意識しましょう。
 1つの自治体内だけで、ライフステージを超えた支援の仕組みを作り上げるのは簡単なことではないですが、他県では、支援者が転入元、転出元の自治体と積極的に情報共有をする、地域の中で子ども、若者の課題について地続きに検討できるような協議会、居場所を設置する等の取組みをしている自治体もあります。
 一方で、進学等で若者が移動してしまう場合が少なくないので、地域内で予め情報を連携していたとしても、本人との関係が途絶えてしまう場合も少なくありません。
 ケアラー・家族の話に対して適宜受容、傾聴、共感し、早期に支援者とケアラー・家族が信頼関係を築くことで、ケアラーや家族が様々な人から支援を受けながら、自分で課題を乗り越えられる経験ができると良いでしょう。
 支援の中で他機関へのつなぎが必要になった場合は、最初のうちはできるだけ同行、同席して、一緒に話を聞くことで、様々な支援者との関わりの構築をサポートできると良いでしょう。
支援者が「良いケア」を評価しないことが重要です。また、会の冒頭で、参加者に、他者を評価することのないように、必ずルールを説明すると良いでしょう。
 ケアラーが集まる会で支援者が「良いケア」を評価してしまうと、参加者のケアラーは「もっと頑張らなくてはいけない」と感じてしまいます。ケアラーが過剰にケアに没頭してしまい、「ケアホリック」のような状態になることは、ケアラーの心身の健康維持や虐待防止の観点から避けるべきです。
 また、今までケアを頑張ってきた参加者が、他の参加者のケアラーに「あなたはもっと頑張るべきだ」などの声掛けをしてしまうようなシチュエーションも、最大限避けるようにしましょう。
 上記のような事態を防ぐために、まず、支援者・ケアラーを含めた参加者全員に、ケアラーの置かれている状況や価値観は一人一人異なるので、他者を評価することのないように、会の冒頭で必ずルールを説明するようにしましょう。
 交流形式の会を運営する際、会の進行を自然に任せてしまうと、力の強い人や声の大きい人が場を支配してしまう場合もあります。参加者のケアラーごとに、「ケアを頑張りたい」「辛くて愚痴を言いたい」等の様々な思いを持っているため、健全に場を運営できるように、ファシリテートする人材を育成し、配置できると良いでしょう。